松山市北井門 T様
北井門の家
ご感想
「北井門の家」に寄せて
いろいろな「流行廃り」があったなと思い返しています。コンクリートの打放しに傾倒した時期、狭小住宅の「ギュッ」とした密度に引き込まれた時期、異種素材の対比に面白さを感じた時期・・・。自分の家の図面を描いていくうちに行き着いたのは、「木組み土壁」という日本古来より建てられてきたスタイルでした。
西渕工務店さんの家に初めて出会ったのは、辰巳町の完成見学会でした。 無垢の魅力にハマってしまい、それ以来10件近くの家を見せていただきました。その度に「自分たちの家はここでお願いしたい」という気持ちが強くな っていったのです。 慣れない木組みの図面を、時に西渕社長の経験やアドバイスを頂きながら描き上げ、4月の地鎮祭を迎えました。
設計を進める上で考慮した主な点を以下に列記しますと、
・北側隣家への日照の影響を可能な限り抑えた建物配置と屋根形状。
・敷地と間取り、架構とのバランスを考えた結果たどり着いた91cm の基本モデュール(柱の間隔)
・架構はできるだけシンプルに、間取りと素直に一致させること。(すなわち、架構が先で間取りをそれに合わせたということです。)
・耐力壁をバランスよく配置し、筋交いを使わない。
・素材そのものがそのまま見える「嘘のない家」とすること。
・襖、引き戸を使い、大広間になったり小部屋になったり、融通性をも たせること。
· 玄関に辿り着くまでのアプローチをできるだけ長くとること。外から見ると玄関先の飾り棚、内から見ると床の間、というように1つの場所に複数の意味を持たせることを考える。
・敷地に「余白」をつくらない。(「空地」ということではなく、全ての部分に「意味」をもたせるという点で。)
・家族室の中心に吹抜をとる。(常に家族の気配を感じ、冬の日照を最大 限に取込み、夏の通風を促すという役割に期待して。音はまる聞こえで
・東西南北全ての向きに窓をとり、「風の路(子)」をつくる。
・親との同居を考慮し、1階に畳の間を2室、目の届く家族室に面して配しました。うち1室は小上がりを設け、バリアフリーが席巻している今日において、 積極的なバリアをつくっています。
・台所の床は反対に家族室の床から1段下げ、畳に座った人と目の高さが合います。
といったようなことです。(もちろんこれだけではありませんが...。)
1月末に引っ越しを終え、5ヶ月が経とうとしています。 冬の朝、以前の借家ではガラスにびっしり、レールには溢れんばかりの結露があったのですが、この家はガラスが少し曇っているかなという程度。寒さも家族室のエアコン1台で充分乗り切れました。・・・土壁、 たいしたもんです! 夏の暑さはこれからですが、果たして借家との違いが感じ取れるのか・・・
楽しみです。
また、北側にある洗面スペースは天窓の効果で、家の中で最も明るい空間になり、「もしかしてここが一番の大成功だったかな?」と感じています。
現在、妻の父に来てもらっており、私たち家族3人が1階で寝ているので すが、2階から吹き抜け越しに聞こえるいびきに安心しつつ、通り抜ける 夜風を心地良く感じながら、毎晩布団に入っています。